Weingott

1940年~1970年代(家族経営終了後~カドガン買収前)に製作されたパイプです。
モンペ伯のHPで「The Windsor Magazine - 19世紀末 英国パイプ製造事情」読んで以前から興味がありました。
1859年(安政5年)、サミュエル・ウェインゴット氏は、ロンドンのフリート街に工房を構えました。
1855年にスタンプ税が廃され、フリート街には次々と新聞社や印刷工場が立ち並びます。
イギリスが「近代新聞の母国」と言われた時代の始まりです。
娯楽の少ない当時、労働者はビヤホールや酒場で新しい新聞雑誌を読みあさったとあります。
1867年にイギリスの新聞社は2304紙に達します。

ウェインゴット氏は、インクの匂いが漂うフリート通りを愛していたそうです。
街角のパブには三文記者と印刷工であふれていた事でしょう。
そんな街中にあるパイプ工房ショーケースに、皆の憧れがあったのではないでしょうか。
「Weingott」はドイツ語で「ワインの神=バックス」の意味もあり、酒飲みファンが多かったかもしれません。

しかし、世界恐慌後、経営難で一族経営が終わりますが、ウェインゴットは高品質を維持続けます。
新聞街という土地柄、独自の支援が受けられた可能性はあります。

後年カドガンに買収され品質を大きく落とす事になりますが、Pipediaには以下のように記されています。
In 1980 Cadogan bought the brand and, according to many pipe smokers, effectively killed it.
1980年にカドガンはブランドを買収しました。パイプスモーカーに言わせると実質殺されたようなもであったと。

このパイプにはありませんが、サンドブラストには「The Templebar Briar」と隣接する通りの名前が刻印されています。
テンプルバーは、アイルランドダブリンの中心地の地名で、17世紀初頭にウィリアム・テンプル卿が家と庭園を造った事に由来します。
ロンドンのこの一角はダブリンを模しており、西にエセックス通り、東にフリート通りが隣接しています。
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Dunhill 台頭以前の19世紀後半~20世紀の初頭、Comoy's、Bariling、BBB、Loewe、Charatan 等のビッグネームと比肩しうる存在だったのが、S.Weingott&Son のパイプだったといわれています。
以下、英国製ヴィンテージ・パイプの紹介サイトとして有名な “Ye Olde Briars(YOB)”の記事に依拠して説明します。
ロンドンのフリート街で店を営んでいたタバコニストSamuel Weingott(サミュエル・ウェインゴット)がブライヤーパイプの製造を始めたのは1860年代。
フランスからの職人を擁する工房で、1933年に死去するまで質の高いパイプの製作を続けていました。
サミュエルの死後、息子の代になると経営難に陥り、会社の権利は他人の手に渡りますが、1970年代にCadoganグループの傘下に入るまでは、同一ファームで製作が続けられていたといいます。
出品したパイプは、YOBでは「ライン名はなく、シャンクファーサイドに WEINGOTT LONDON のスタンプがあるのみ」と説明される、家族経営時代の後、Cadogan時代以前の製品です。
この時代の Weingott はパイプの質は family era より下がるものの、
「不思議なことにPre-CadoganのWeingottにおいてはそういった製品でも優秀な喫味を保っており、ブライヤーの質やキュアリング方法にあまり変化がない。人手に渡ると極端に質が落ちるメーカーが多かった英国パイプの中でも」
珍しいといわれる、その一品です。
出品したWeingottは、全長140ミリのほっそりとしたダブリン・シェイプ。
表面は、半面が Bariling’s の fossil を思わせるような、ワッフルのように見えるサンドブラストです。
シャンクとマウスピースの継ぎ目はなだらかにつながって、ていねいに工作された、どこか女性的な優美さをそなえたパイプだと思います。
ボウルを左側にしたシャンクの底面、ステムに近いファーサイドに WEINGOTT LONDON と刻まれています。
ボウルトップに、やや焦げ跡が見えています。
マウスピースはバルカナイト(エボナイト)製。リップの上側に深さ1ミリ弱の凹みがあります。
テノン(ダボ)は、きれいな状態です。
全体の印象:おそらく50年以上の経年にしては、使用感は少ない印象です。
ボウル表面:ボウルトップに熱による変色が少し見られます。
ボウル内側:カーボンの付着はごく薄く、きれいです。
リップ :上側に凹み、下側は極小の傷が少し見えますがきれいです。
パイプ全長:140ミリ
ボウル高さ:43ミリ
ボウル外径:27.5ミリ
ボウル内径:17ミリ
火室の深さ:39ミリ
パイプ重さ:22グラム
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「26.S.Weingott & Son」カテゴリの記事
- Weingott(2016.05.15)
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