カテゴリー「12.Dan」の3件の記事

2017/10/07

Dan Chimney

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DANの代名詞ともいえるチムニーで、シェイプ名がモデル名になっています。
火皿からシャンクにかけての絶妙な鋭角はダンならではの美しいシェイプ改革が感じられます。
 
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チムニーは「煙突」の意味で、トッパー(シルクハット)やスタック(汽車・汽船の煙突)とも呼ばれます。
しかし、このパイプはシャンクが鋭角についているので、三角の屋根についている煙突のイメージが一番しっくしています。
 

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1961~62年のDANカタログのページは、この「CHIMNEY」のページだけ以下の長いの解説が記載されています。
 
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 「THE HIGHST FASHION」
   for enjoyment of tabacco - and the most healthy too - is pipe-smoking!
   The DAN CHIMNEY pipe affords the same pleasure as the Habana-ciger to a ciger-smoker.
   The even burning of the tabacco takes place in the same way.
   The boring of the pipe-bowl is only 14mm, and the cowl is vertical smoking - as of all other
 
 「最高のファッション」
   タバコを「とても健康的に」楽しむにはパイプです!
   DAN社のCHIMNEYパイプは、シガースモーカーにハバナ産葉巻と同じ喜びを紹介します。
   タバコは(葉巻と同じように)均一に燃焼します。
   ボウルの径は14ミリで、カウルの向きは垂直になります。
 
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明らかに葉巻喫煙者をパイプに囲込む内容です。
キューバー革命が終わり中南米が流動化した時代です。
ハバナ葉巻が入手困難になった事が背景にあるのかもしれません。
価格は92クローネ以上で、今の価格で約5~7万円位です。
 
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片面を一面バーズアイが埋めており、迫力があります。
反対側もグレインからバーズアイに流れるように広がっており、綺麗なパイプです。
 
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日本銀行監事で登山家の藤島敏男氏(1896-1978)が、このダンのチムニーを咥えてテレビ出演していたそうです。
(息子の嫁が、ジャニーズ副社長のメリー喜多川です)
 
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 ・全長:116mm・ボウル高:90mm
 ・外径:25mm・内径:15mm・深さ:79mm
 ・重量:44g
 
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刻印は薄く、左側に「PIPE-DAN COPENHAGEN」上側に「PIPE-DAN」のみです。
通常は左側に刻印される「DAN SHAPE-REFORMED」がありません。
また販売年月、価格、外部にキズがる場合の「F」刻印もありません。
 (K:パテ埋め、F:小疵あり、P:ピンホールあり、H:無傷、刻印なし:無傷)
また、同じモデルより一回りサイズも小さいので、試作か展示品かもしれません。
 
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外観:3
感触:3(咥え心地)
味:?(オールラウンド)
 
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アンスモで落札しましたが、数回喫煙したライトスモークでした。
コルシカ産ののブライアで、コントラストは少し薄いですが喫煙し色づくのが楽しみです。
ステムも精緻な作りで、コモイのスレンダーバイト並みの薄さが咥えやすいです。
ボウルトップが、極わずかにすり鉢状になっているのも良い仕事ですね。
 
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パイプ作家のプレベン・ホルムは16才(1963年)でDANに入社し、独立するまで5年間務めています。
ダンでは、毎週20~30本のパイプを店頭で販売していたそうです。
おおざっぱに計算すると、年間で1300本、6万円平均で売れたとして、本店で1億円程の売上げとなります。
また、当時としてはめずらしくカタログ通販を行っており、北米に多く輸出していたとあります。

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1961年の営業時間:
  月~木 AM8:00~PM5:30
  金曜日 AM8:00~PM8:00(当時でも金曜の夕方に来客が多いようですね)
  土曜日 AM8:00~PM2:00
 
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2009年に同じチムニーがsmokingpipes.comで販売されていました。
1976年製で150ドルで販売されています。
 
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2017/02/23

Dan Shape-Refomed Loran

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ダンパイプ社ロラン氏(Ib Loran)の1970年パイプです。
フォルムとグレインのマッチが気に入り落札してしまいました。
クラシックシェイプではベントダブリンです。
ダンのシェイプ名は「バイキング(Viking)」が近く、フレイムグレインの為に作られたようなフォルムです。
 
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ロラン氏は1955年頃にパイプ製作を始め、1950末頃にダンで働き始めたようで、1961年カタログの28ページに載っています。
ダンが閉店する1991年まで勤めており、その後ポール・ウィンズロー「Poul Olsen's」で少量生産しています。
 
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氏の情報は少なく、1971年秋にロイヤルコペンハーゲン主催のデザインコンテストに記事が残っています。
コンテストの優勝($450/Cr2000)はミッケ33才、2位($225)にロラン、3位($150)にL・イバルソン26才が入賞しています。
敢闘賞はアンネ・ユリエ31才で、フォーマの元で修行を終えた頃になります。
2位の賞金は1000クローネ(現在の50万円位)で、ちょっとしたボーナスにうれしそうですね。
少し老け顔のロラン氏ですが、90年代までパイプ製作している事を考えると40代中頃と思います。
 
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ネット検索するとシェイプはブランディーが多く、次いでカッター・バイキング・ベストポケットが見つかります。
後日談ですが、ロイヤルコペンハーゲンはミッケを専属デザイナーに招き、出社不要で自由に制作が行える破格の待遇でした。
ミッケを代表する「金魚(フグ)」や「尻われ」のデザインが提供されたそうです。
 
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 ・全長:148mm・ボウル高50mm
 ・外径:38mm・内径:20mm・深さ45mm
 ・重量:43.5g
 
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刻印はシャンクのみ。
  左「DAN SHAPE-REFORMED」
  上「PIPE-DAN」
  右「PIPE-DAN COPENHAGEN 165 P 1170」
  下「LORAN HAND CUT DENMARK」
 
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刻印から1970年11月に165クローネ($37/\13,300)で販売された事がわかります。
これはダンヒルやサシエニ-4DOTと同じ価格帯で、今の価格で約5~7万円位になります。
「P」はピンホールの略で埋め跡がある事を示します。
 
Ds  
 
リップエンドの作りは気に入りました。
エッジがなく、ノッチの角度がほど良いのでマーブルチョコレートのような感じです。
 
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 外観:4
 感触:4(咥え心地)
 味:3(オールラウンド)
 
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使用回数が少なく、まだ保護材が残っている状態ですが、軽めの吸い味でブライアの香りも悪くありません。
フローは快適ですが、コニカルチャンバーで先細りが強く、後半が難しくなります。

<注意>
1980年代ぐらいまでデンマークを中心としてアスベストを人工カーボンに混ぜていた噂があります。
証拠の記録はありませんが、時代背景的に使われていても不思議ではありません。
試しにメッシュタイプ・サンドペーパで保護材を剥がしてみました。

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娘のTine Loranもパイプ製作しています。
上がロラン氏1982年作($250)で、下が娘ティナ2010年作($150)のパイプです。
小ぶりなパイプが多く、父親譲りのベント・ブランディーが得意なようですね。
 
Loran
 
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<1万円の当時の価値>
    収入比較 企業物価指数
1970年 5万3千円 3万1千円
1975年 2万4千円 1万8千円
1980年 1万7千円 1万3千円
 
 
 
<銀行の初任給>
1898年:35円
1905年:35円
1910年:40円
1915年:50円
1920年:70円
1925年:70円
1930年:70円
1935年:75円
1940年:75円
1945年:80円
(1947年:220円)
(1948年:500円)
1950年:3000円
1954年:5600円
1955年:6000円
(1956年:5600円)
(1957年:12700円)
1960年:15000円
1965年:25000円
1970年:39000円
1975年:85000円
1980年:103000円
1985年:127000円
1990年:161000円
1994年:174000円
<大企業の初任給平均>
1995年:194200円
2000年:196900円
2005年:196700円
2010年:200300円

2016/11/07

Dan Shape-Refomed Standard

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1943年ドイツ占領下にあるコペンハーゲンでH・ダン・クリステンセンが開いたパイプショップ。
ゲルト・ホルベックなど名だたるパイプ作家をデザイナーに迎え、一世を風靡したダニッシュブームの一翼を担ったメーカーです。
 
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火皿にステムが鋭角につながるシェイプは、会社のロゴに採用しているダンを代表するデザインです。
広告には「1.Even」「2.Longer」「3.Cooler」「4.Dry」の4テーマがるあると記載されています。
 
  1.喫煙時火皿が垂直に向くとうに設計されている → どのパイプも同じ吸い味
  2.火皿が高い → 長時間吸える
  3.火皿が小口径(12~17mm) → クールスモーキング
  4.簡単に最後まで吸える → ドライスモーキング
 
ダンが「Shape-Refomed(改良されたシェイプ)」とし、世に出したパイプを堪能してみたいと思います。
 
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マホガニーカラーで、綺麗なグレインがパイプの中を通る煙のように見えます。
ボウルふちが極わずかにラウンド処理されており、やわらかい印象を与えます。
 
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 ・全長:140mm・ボウル高56mm
 ・外径:27mm・内径:17mm・深さ52mm
 ・重量:36.1gが
 
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あっちこっちに「DAN」の刻印がされていて、どんだけ自分の名前が好きやねんと思いますが・・・
 
  左「DAN SHAPE-REFORMED」
  上「PIPE-DAN
  右「PIPE-DAN COPENHAGEN」「DU」
  ステムに金色で「DAN
 
ダンパイプは本店で販売時は、製品保証の為に販売年月・値段(クローネ)をお店で刻印していました。(例:120と912の場合、1969年12月販売120クローネ)
このパイプはその保証刻印がありませんので、タバコニストへ卸していたモデルのようです。
「DU」は製作者のイニシャルになりますが、詳細はわかりません。
 
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 外観:3
 感触:3(咥え心地)
 味:3(オールラウンド)
 
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チムニーの細長いボウルは、下層の燻されるタバコの香りを楽しむ事ができるので好みです。
17mm以下の内径にカーボンを付けると15mm以下になります。
燃焼速度が安定しているタバコ(オーリックGS等)を選ぶ必要がありそうです。
 
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濃い味ではありませんが、ブライアの香りが良く美味しいパイプです。
ダンはホルベックのパイプをお店で見つけた時「俺の考えたシェイプをマネするな」と怒鳴り込んだそうです。
その後、誤解が解け、親友となったホルベックを雇う事になるのですが、それぐらい思い入れのあるシェイプだったのですね。
そんなエピソードに思いをはせながら一服すると、美味しさもいっそう増します。(後述)
 
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[DanとHolbekの年譜]
  1928年 :ゲルト・ホルベックが生まれる。
  1943年 :H・ダン・クリステンセンが、大戦下のコペンハーゲンで開店する。
  1953年 :ゲルト・ホルベックはスーア・ラスムセン工房に勤める。
  1955年 :シカゴのイワンリース店がダニッシュを宣伝し、北米を中心にダニッシュブームがおきる。
  1956年 :ホルベックを専属パイプ作家として契約する。(ローランやポール・ハンセン等も)
  1960年初:カラーで美しいパイプを掲載したカタログを発行し、アメリカ・日本で脚光を浴びる
  1963年 :プレーベン・ホルムが入りパイプを販売(~1968年)
  1974年 :ダン・クリステンセン他界。インゲ・ダン夫人が経営を引き継ぐ。
  1980年頃:ダニッシュパイプブームの終焉。徐々に品質が低下しはじめる。
  1991年 :ダン閉店
  2007年 :ホルベックが引退する。パイプ製作数は6662本。
         隠居後はデンマーク北部ニュージーランドの自宅で小説家を書いている。
 
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晩年の写真は好々爺ですが、ダンもホルベックも若い頃はすごく頑固そうな顔してる。
 
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ゲルト・ホルベック(Gert Holbek) 1928年生まれ-88歳(2016年)
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ゲルトは1928年に技師の父もと10人兄弟の長男として生まれました。
父親はいつもパイプを咥えており「おむつの交換さえ灰をまき散らす」と妻を嘆かせていたそうです。
1945年終戦と同時に学校を卒業しますが、就職難の時代で農家・園芸・大工と職を転々とする事になります。
その後の経緯は不明ですが、修道院で修道士となり勉学にも励み勲章を授与されるまでに至っています。
しかし、失恋を機に修道士辞め、その後し結婚、子供も生まれますが定職には就けませんでした。
 
1953年、広告で見つけたスーア店でパイプの修理の職に就きます。
前任にイバルソンがいますが、スタンウェルが後ろ盾になって1951年に独立しているので、時期的に重なっていません。
修理の専門に雇われていたようです。
後年「スーア店でパイプをつくる事を許されていたのですか?」との記者の問いに・・・
「ただ一つ!」ニコリと笑って「私はポール(ラスムセン)が、それを作るのを見ていただけだ」と答えたそうです。
 
1956年に修理依頼が減った事を理由にスーア店を解雇されます。
パイプを作りで細々と糊口しのいでいたゲルトの前に「俺のパイプのマネをするな!」と怒鳴りこんできた男が彼の運命を変えます。
誤解は解け、親友となったダン・クリステンセンは、ゲルトを専属の作家として迎え入れます。
ダンパイプはカラーで美しいカタログを作成し、北米や日本で紹介すると瞬く間に絶大な人気を博する事になりました。
 
ゲルトは母国デンマークではその存在がほとんど知られていないそうです。
パイプクラブ参加せず、また取材にもほとんど応じていませんでした。
工業デザイナーとしての副業もあり、若手デザイナーの講師としても務めていたそうです。
 
空前のダニッシュブームも終焉を迎えた1974年、盟友ダンが他界します。
1991年にダンパイプは閉店、ジョージ・ジェンセンの元に入りましたが腱鞘炎を患ったり、高齢の経緯もあり製造数は減っています。
2002年に引退宣言し、コペンハーゲンから北に50km程のニュージランドの自宅で小説家を目指しているそうです。
その生涯で作成したパイプは、6662本と記録されております。
バイキング小屋を模した茅葺屋根の自宅には、すぐにでも動かせる旋盤や電動サンダーが一式そろっているそうです。
 
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ホルベック氏曰

「私の人生で完璧なパイプを作ろうとしたが、それ以上のものを作ってはいけない」
 


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